IgG4関連疾患患者会

IgG4関連疾患について

1.どのような病気ですか?

IgG4関連疾患は、血中のIgG4の値が高く、罹患した臓器に多くのIgG4陽性リンパ球の浸潤や線維化をみとめる、原因がわからない病気です。この疾患では、同時または別のタイミングで体の様々な臓器に腫れや結節、肥厚などの変化が起こります。

この病気は涙腺・唾液腺、膵臓、胆管、腎臓、肺、後腹膜、動脈、中枢神経系、甲状腺、肝臓、消化管、前立腺、リンパ節、皮膚、乳腺など、多くの臓器にわたって現れます(図)。複数の臓器に影響を及ぼすことが一般的ですが、場合によっては単一の臓器に限定されることもあります。

どの臓器に現れるかよって症状は異なりますが、よく見られるものには、まぶたや顎の下の腫れ、目や口の乾燥、ものがだぶって見える、鼻づまりや嗅覚の低下、皮膚の色が黄色くなる、腹痛、喘息のような症状、などがあります。

慶應義塾大学病院KOMPASから許可を得て転載 慶應義塾大学病院KOMPASから許可を得て転載

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

初めて調査が行われた2002年には、約900人(人口10万人あたり0.82人)程度の膵臓病変の患者さんが確認されました。

2009年に行われた全国調査によると、IgG4関連疾患全体の患者さんの数は約8,000人で、平均年齢は58.8歳でした。男性と女性の比率は2:1で、男性が多かったです。

詳しく見ると、涙腺や唾液腺の病変がもっとも多く(4,304人)、次に膵臓の病変が2,790人、肺の病変が354人、後腹膜の病変が272人と報告されていました。

他の報告でも、IgG4関連疾患の発症は60歳前後で男性に多いことが共通しているようです。ただし、涙腺や唾液腺の病変だけは、男女間に差がないとされています。

2016年の調査では、約13400人(10万人あたり10.1人)と患者さんの数に明らかな増加が見られました。これは、病気の診断能力が向上したことだけでなく、この疾患が広く知られるようになったためと考えられます。そのため、現在の患者さんの数はもっと増えている可能性があります。

3.この病気の原因はわかっているのですか?

この病気はまだ原因がはっきりしていないものの、自己免疫やアレルギー、炎症と関連している可能性が考えられています。

4.診断はどのようにおこなうのですか?

この病気の診断は、①血液検査、②画像検査、③病理組織学的検査を組み合わせて行います。

血液検査では、IgG4の値が上昇することが特徴ですが、悪性腫瘍や似たような病気でも上がることがあるので画像検査や病理組織学的検査を組み合わせて総合的に判断します。また、その他の病気でみられるような血液検査所見がないかも確認して慎重に判断します。

画像検査では、CTやMRI、エコー検査、内視鏡検査などが使われます。これらの検査で、体全体にIgG4関連疾患の病変がないか確認します。また、FDG-PET検査という新しい検査法もありますが、現在は保険が適用されません。この検査はIgG4関連疾患の病変を検出することに優れていると報告されており、将来的には保険が適用されることが期待されます。

病理組織学的検査は、病変組織を細い針や手術で取り出し、顕微鏡で観察する検査です。罹患した臓器の組織を調べることで、悪性腫瘍(がんや悪性リンパ腫など)や似たような病気(シェーグレン症候群、別の原因による胆管炎、多中心性キャッスルマン病、別の原因による後腹膜線維症、多発血管炎性肉芽腫症や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの血管炎、サルコイドーシスなど)との違いを見分けることが必要です。この検査を通じて正確な診断を得ることが大切です。

5.治療法にはどのようなものがあるのですか?

治療としては、副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)の投与をまず考えます。多くの場合、ステロイド治療が効果的であり、症状が改善します。最初は比較的多い量(プレドニゾロンで30~40㎎/日程度)を使い、徐々に減らして、その後は少ない量を続ける方法で行います。3年以上ステロイドを使用しても再発しない場合は、ステロイドの中止を検討します。ただし、プレドニゾロンが1日10 mg以下になると再発のリスクが高まるため、減量は注意深く行います。約半数の患者さんでステロイドの減量や中断後に再発することがあります。再発時には、ステロイドの量を増やしたり、免疫抑制薬を併用したりすることもありますが、再発時の治療法はまだ確立されていません。

ステロイドにはいくつかの副作用があります。例えば、感染症を引き起こす可能性や、糖尿病や脂質異常症などの代謝疾患の悪化、骨の脆弱化や脊椎圧迫骨折、白内障などの眼の問題を誘発することがあります。特に高齢の方は、これらの合併症を考慮して、ステロイドの量や治療期間、開始のタイミングを決める必要があります。

欧米では、再発した場合にリツキシマブが効果的であるとの報告がありますが、日本では保険が適用されず自己負担となる場合があります。

涙腺・唾液腺病変は、他の臓器に関連したIgG4関連疾患とは異なり、治療を進める代わりに慎重に経過を見る選択肢も考えられます。ただし、涙腺・唾液腺の腫れが長く続くと、徐々に涙や唾液の分泌が低下し、涙腺や唾液腺の働きが回復しなくなる恐れがあります。また、涙腺・唾液腺の炎症が先行している場合に、より重大な内臓の病変が後に出現することもありますので、治療をしない場合でも、定期的なフォローを受けることをお勧めします。治療の必要性や進め方は患者さんの状態によって異なるため、医師とよく相談し、適切な判断を行いましょう。定期的なフォローや検査を通じて、病気の進行を把握し、必要なケアを行うことが大切です。