循環器疾患

1.どのような病気ですか?

 血管の周りを取り囲むように硬い塊(腫瘤)ができます.お腹の中の背中側(後腹膜)で,腎臓や尿管の近くにも同様のものができることもあります.この病変には,IgG4分泌細胞の著しい浸潤と,強い線維化が認められます.高齢の男性が大部分を占めます.病変が小さい場合,症状はありません.
 血管の周りにできた場合は,血管の壁に炎症が起こり,腹痛や腰痛,発熱を伴うことがあります.このような炎症は,他の臓器のIgG4関連疾患では稀なことでありで,血管のIgG4関連疾患特徴的です.血管病変では血管以外のIgG4関連疾患病変と比較して, 白血球増加,炎症反応亢進などもよく伴うと言われています.血管の壁が破壊されると,動脈が膨らんだり(動脈瘤),動脈が裂けたり(動脈解離)することがあります.動脈瘤破裂や大動脈解離は急激に発症して致死的になるので,他の臓器にIgG4関連疾患がある場合は,血管にも病変がないか,確認することは大事です.逆に動脈瘤の患者さんをよく調べるとこの病気がみつかることもあります.血管では腹部大動脈が好発部位ですが,大動脈から分岐した太いレベルの血管にもよく起こります.胸部大動脈や頚部動脈や四肢末梢の発生は稀です.また,心臓を栄養する血管である冠動脈にも起こります.太い血管とは異なり,冠動脈の病変では血管狭窄を起こす場合があり,狭心症や心筋梗塞の原因となったとの報告が複数あります.また,IgG4関連疾患は,多くの臓器に多発しますが,血管でも幾つかの血管で多発する事が多いと報告されています.
 お腹の中の背中側,腎臓の周りや腎臓から膀胱に尿を運ぶ管(尿管)の周りに病変ができる場合があります.病変により周りから圧迫されて尿管が細くなると,尿が流れず腎臓の機能が低下する事があります.

IgG4関連炎症性大動脈瘤の60歳男性(血清IgG4 165mg/dL)の造影CT画像。
拡張した大動脈(*)の周囲に厚い軟部陰影(矢頭)がみられる。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

 腹部大動脈瘤患者の1−5%に,この病気が見つかります.腹部大動脈瘤とは,通常は直径20mm程度の大動脈が30mm以上に膨らんだ状態です.加齢とともに増加し,画像診断では60歳以上の4−8%程度に腹部大動脈瘤を認めるとも言われており,年間で約1万人が手術されています.動脈瘤を形成しない血管周囲の病変もありますので,頻度はもう少し高くなります.IgG4関連疾患全体の中では,20-25%に血管病変が合併しているとの報告もあります.
 お腹の中にできた場合は,症状が無い場合も多いため,実際の頻度は明らかではありません.

3.診断・治療法にはどのようなものがあるのですか?

 診断としては,CT検査,MRI検査などの画像で血管周囲や後腹膜に腫瘤が見つかり,血清IgG4濃度の測定を行う場合が多いです.CT検査,MRI検査の際には造影剤を使用し,血管の外側に病変が存在する事を確認することが重要です.他臓器のIgG4関連疾患があり,画像検査で血管や後腹膜を調べて見つかる場合,また,動脈瘤や動脈解離の症例の手術があった場合,その組織をよく調べて見つかる場合もあります.
 治療法としては,他臓器のIgG4関連疾患と同様にステロイド治療が効果的ですが,症状の無い場合は様子を見ます.
 血管の周りにできた場合,発熱,腹痛等の血管炎の症状を伴う時には,先ずステロイド治療を行います.その際に,ステロイドは動脈瘤を進行させる因子になるので,ステロイドの投与量,投与期間には十分な注意が必要です.動脈瘤が進行してきた場合は,外科的に動脈瘤を取り除くか,血管内にステントグラフト挿入を行い,血管が破れない様に治療します.一般的に,胸部瘤は瘤径が5.5~6cm以上,腹部瘤は5〜5.5cmが待機的手術適応とされますので,これに準じて外科的治療となります.
 尿管を巻き込んで起きた場合,腎機能の低下が生じてきた時は,尿管内にステントを挿入して尿の流れを確保し,ステロイド治療を行います.治療により腎臓の機能が回復し病変が縮小した後には,挿入した尿管ステントの抜去を行うこともあります.

4.この病気の原因はわかっているのですか?

 原因はまだよくわかっていません.アレルギーや自己免疫疾患との合併が多いため,免疫系の異常の関与が推定されています.血管の場合は,高齢男性に多いためか,高度の動脈硬化を伴う場合が多く,動脈硬化との関連も研究されています.

循環器疾患分科会 笠島 里美(分科会長)

IgG4関連疾患とは

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