IgG4関連疾患は、血中IgG4値の上昇と多臓器へのリンパ球や形質細胞浸潤、特にIgG4陽性の形質細胞浸潤を特徴とする全身性の慢性炎症性疾患です(※)。本研究班は2009年に、「オールジャパンのIgG4関連疾患の研究体制」(厚生労働科学研究補助金による難治性疾患研究事業)としてスタートしました。その後、世界に向けて本疾患を新しい疾患概念として提唱し、これまで「疾患病名の統一」や「包括診断基準の策定」に貢献してきました。米国ボストンで開催された第1回IgG4関連疾患国際シンポジウム(2011年)では、本研究班の研究成果を示すことにより、本研究班が提唱する疾患概念と「IgG4-related disease (IgG4-RD)」という疾患名が全世界からも承認されました。
国内においては、IgG4関連疾患の病態解明、診断法と治療法のさらなる発展のため、多くの関連学会と連携し、それぞれの専門家で構成される分科会を設置して各臓器疾患の実態調査や診断基準の策定作業を行い、2015年には本疾患は厚労省の指定難病となりました。
現在、本研究班は、消化器疾患、涙腺・唾液腺疾患、眼・内分泌・神経疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、腎臓病、病理・放射線の7つの分科会と診断基準検証・統合、疾患活動性策定、患者レジストリ活用、診療ガイダンス作成、患者会支援の5つの委員会から構成され、班員数も173名(研究代表者:1名、研究分担者:31名、研究協力者:141名)となり(2023年9月現在)、まさにオールジャパンの研究体制で事業を進めております。
本研究の事業としては、
(1)改定包括診断基準と各臓器疾患診断基準の検証と改定
(2)重症度分類、疾患活動性指標、寛解基準の検討と策定
(3)患者レジストリの継続実施とデータの解析
(4)全国頻度調査結果の解析と評価
(5)診療ガイドラインの作成
(6)AMED難病実用化研究事業(国立国際医療研究センター)との連携
(7)社会への啓発活動(患者会との協力 市民公開講座の開催、ホームページの開設など)
に取り組んでおります。
上記の7つの研究項目を確実に進めることにより、患者さんの経済的負担の軽減(難病の医療費助成)や新規治療法の確立にも大いに貢献することができると考えています。
※免疫グロブリン(抗体)にはIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類があり、その中のIgGにはさらに4つのサブクラスがありますが、IgG4はその1つで、通常は血中IgGの3〜4%程度しかありません。罹患臓器に浸潤するIgG4陽性形質細胞によりIgG4が産生され、血中IgG4値が上昇することになります。
厚生労働科学研究費補助金
(難治性疾患政策研究事業)
「オールジャパン体制によるIgG4関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究」班
研究代表者: 川野 充弘